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東京弁護士会所属弁護士

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ドラマのセリフと法律用語

論考
April 27,2021

 フジテレビ月9のドラマ「イチケイのカラス」がホントに面白い。

 元弁護士の刑事裁判官という、ホントにそんなルートがあるのか?という経歴の主人公(竹野内豊さん)が、毎回、刑事事件を裁いていく内容ですが、えん罪をテーマにした回や、被告人を心から反省させる回、周りの反対を押し切ってムリクリな調査をする回など、弁護士が見てても面白いドラマです。間違いありません。

 実は、このドラマに限らず、「リーガルハイ(フジテレビ)」や「99.9 -刑事専門弁護士-(TBS)」などの裁判モノのドラマを見ているといつも思うことがあるので、少しお話したいと思います。

法律用語はイントネーションがおかしい

 私は福島出身なので、東京に出て20年以上が経ってもいまだにイントネーションがおかしいのですが、法律用語の中には、一般とは違うおかしなイントネーションというものがあるようです。

 正確には、16年間、弁護士をやっている身として、一般の方に言われて初めて気づいたのですが、例えば、一般的には「判決」という言葉は、少し低めのトーンでアクセントをつけずに「はんけつ」と発音するそうです。また、「和解」という言葉も同じようなイントネーションで「わかい」と発音するそうです。

 しかし、裁判所の中では、「はんけつ」は、「は」にアクセントをつけて発音します(「トンカチ」のような感じです)。また、「わかい」は、「わ」にアクセントをつけます。

 もっとも、何でもかんでも最初にアクセントがくるわけではなく、「原告」は確かに「げんこく」の「げ」にきますが、「被告」は、少し低めのトーンでアクセントをつけずに「ひこく」と発音します。

 ドラマの中では、こういった法律用語について、結構、忠実に再現しているのでとても感心しています。

 裁判モノのドラマのセリフで、おや?と思ったら、実はそれが正しい、ということを知ってみてください。

弁護士が監修してても“ドラマの都合”というものがある

 他方で、裁判モノのドラマを見ていて、「こんなのあり得ない」、「監修している弁護士、大丈夫?」と思うことがあります(大変、僭越ですが・・・)。

 しかし、実は、これ仕方がないことなのです。

 例えば、前述の「イチケイのカラス」では、竹野内豊さん演じる刑事裁判官が遠山の金さんのように裁判所の外に出て行って自ら証拠を集めたりするのですが、このとき、「裁判所主導で捜査します」と言うセリフがあります。

 ここで、裁判モノドラマは大好きですが“法的な間違い”を探すのに躍起になっている私は、「『捜査』をするのは検察官や警察官であって、裁判官がするのは、『職権による検証や鑑定』であって、『捜査』なんてしないよ」などと、したり顔をしたりするのですが、これはこれで仕方がないのです。

 なぜなら、竹野内豊さんのセリフとして「裁判所主導で“調査”します」では、何だか迫力がないし、裁判モノっぽくなくなってしまいます。

 そのため、あえて視聴者が“それっぽく”聞こえてドラマに引き込まれやすい用語を使っているということです。

 ところで、先日、僭越ながら私が監修した「おっさんず六法(松沢直樹(著)飛鳥出版)」も、他の弁護士が読んだら、「この山岸っていう弁護士、労働法わかってるのかね?」と思われてしまう箇所も多々あります。

 しかし、読者層を考えて、この本の意図を考えて、松沢さんの伝えたいことを忖度して、何とか法律的に間違ってはいないという程度に脚色しなければいけないので、そこらへん、ドラマのセリフの話と同様だということをご理解いただきたいのです。

弁護士でも知らない法律用語もある

 堺雅人さんの人気ドラマ「リーガルハイ(フジテレビ)」の中で、堺雅人さん演じる弁護士が法廷で傍若無人なふるまいをして、裁判官が廷吏(警備員)を呼びつけ、「この弁護士を監置しろ」と命じるシーンがありました。

 この後、実際に廷吏(警備員)に連れられ拘束されるのですが、「いやいやいやいや、弁護士は法律で守られているんだから、裁判所が強制的に拘束なんでできないよ、ドラマだなぁ」と笑っていたのですが、ふと気になって何年も開いていない法律用語辞典を開いてみると・・・

 「法廷等の秩序維持に関する法律」という昭和27年に施行された法律の中に、「裁判官は、法廷で暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害したり、裁判の威信を著しく害した者に、20日以下の監置ができる」、「裁判官は、その場で直ちに、裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。」と記載されていました。

 要するに、裁判所内で裁判官の指示に従わずに大声を出して騒いだり、裁判所という権威を傷つけるようなことをすると、弁護士であっても警察官に拘束もされますし、最大20日間、監置(同じく身柄を拘束する制度である、逮捕でも、勾留でも、懲役でもなく、「監置」と言うのです)されるというわけです。

 このように、裁判モノのドラマは、弁護士にとっても“大変勉強になる”こともあります。

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