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中山修身先生すごい!頭が下がります
論考
May 26,2022
山口県阿部町4630万円事件は、ウクライナや知床沈没やコロナといった大きなニュースが続く中でも、やはりお金の問題はニュースやワイドショーでもずっと取り上げられていますね。
先日、“決済代行業者”3社から合計4000万円以上の返金を受けたとのニュースがあり、この際、阿部町の代理人弁護士の中山修身先生が解説されておりました。
その中で心からスゲー、と感じたのが「国税徴収法に基づき、田口翔と決済代行業者間の契約は公序良俗により無効であることを理由に、田口翔が決済代行業者間に対して有する返還請求権を差し押さえた」という点です。
字面(じづら)を見ると、なんのこっちゃとなるのですが、要するに、
①田口翔が海外カジノで遊ぶために、その資金をカジノに送金する手続きを代行していた決済代行業者と契約をした、
②しかし、その内容は、「日本では違法なカジノで使う資金を扱う契約」であるから、日本の公序(日本のルール)に違反し無効である、
③無効であるとすると、決済代行業者は田口翔に対し、その資金を返金しなければならない、
④ところで、田口翔は、阿部町の税金滞納がある、
⑤そこで、国税徴収法に基づき、「田口翔が決済代行業者から返金してもらえる権利」を差し押さえた、
というものです。
この国税徴収法、実は、明治時代に制定されたものすごく強力な法律です。
裁判をすっとばして、銀行預金を差し押さえたりできます。
今回、田口翔に税金の滞納があったので、手続きをとって「田口翔が決済代行業者から返金してもらえる権利」を差し押さえたのでしょう(なお、差押えは、「滞納分」だけではなく、例えば、銀行預金だったら全部を差し押さえられます)。
この、「田口翔と決済代行業者との間の契約は無効だから、阿部町が田口翔に代わって回収しよう」という発想について、心からスゲーと思いました。
この中山修身先生、ベテランのとても優秀な方のようです。こういった先生、本当に尊敬します。
ところで、国税徴収法による差押えは、「『滞納分』だけではなく、例えば、銀行預金だったら全部を差し押さえられます」ですが、実際は、滞納分しか回収できません(当たり前です)。
田口翔が滞納していた税金は数万円程度だったということですが、それにもかかわらず、決済代行業者は4000万円以上の返金をしたというから不思議です。
おそらく、
①実は、田口翔は、海外カジノで“儲け”ていて、真実、決済代行業者にカジノで勝った金銭」が入っていた、
②決済代行業者が、関わりをなくすために自腹で返金した、
③決済代行業者から海外カジノへの送金前だったから、返金した、
といったところでしょう。
それにしても、中山修身先生、どうなってこうなったかは「知らん」とのことでした。
決して成果を強調せず、「国税徴収法に基づき、田口翔と決済代行業者間の契約は公序良俗により無効であることを理由に、田口翔が決済代行業者間に対して有する返還請求権を差し押さえた」だけを説明する姿、スゲーし、見習いたいです。