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東京弁護士会所属弁護士

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web会議システムを利用した団体交渉のお作法

紛争解決
October 06,2021

 

 先日、株式会社日本法令主催のwebセミナーにて、「オンライン時代の労働組合とその対応」と題する講師を務めてきました。

 以前にも、何度か「労働組合とは何か」や「団体交渉のお作法」を説明していましたが、今回は、今、あちこちで重宝されているweb会議システムを使用した「団体交渉」について解説したいと思います。

オンラインで団体交渉はできるのか?

 できます。

 団体交渉は、ご存じのとおり、給料などのアップやや職場環境の改善などを協議するための労働者と会社の交渉ごとであり、時には労働者の配置転換や解雇の有効性などを巡って、喧々諤々の議論が行われたりします(15年以上前、“歴戦”の労働組合員との団体交渉で灰皿が飛んできたこともあります)。

 労働者・労働組合側、会社側、それぞれが屋内に集まって、スチールデスク越しに議論が熱くなれば飛沫も広がり、いわゆる「三密」状態となります。

 どう考えても、昨今のコロナウィルス感染状況からすれば、避けるべき状態と考えられます。

 しかしながら、団体交渉は、憲法上の労働者の重要な権利のため、誤解を受けるかもしれませんが“コロナ禍に優先します”。

 このため、単に、「今はコロナ禍だから」として団体交渉を拒絶することは不当労働行為(労働組合法第7条)と評価され、労働委員会(行政機関)からお咎めをくらうおそれがあります。

 したがって、コロナウィルスに感染しないように工夫した団体交渉を実現することは肝要ですし、そのため、ウェブ会議などを利用した団体交渉は、是非、やるべきなのです。

オンラインの団体交渉の準備

 今や、裁判所もweb会議を利用したオンライン裁判期日を開催しています。私も、自宅マンションにおけるオンライン理事会、オンライン・セミナーの講師、クライアントとのオンライン会議などを経験していますが、どんなに機材が進化してネット回線が高速になっても、不調の発生をゼロにすることは不可能のようです。

 このため、いきなり、労働者・労働組合側、会社側がそれぞれパソコンの前に揃って、「では、団体交渉を始めましょう」というのではなく、その前に、それぞれ事務折衝者を定め、事前に、①それぞれの部屋・会場のwi-fiなどの通信環境を確認したり、②カメラ・マイク・スピーカーなどの周辺機器の性能を確認したり、③画面上で資料を使用することを想定し、ウェブ会議用アプリ・ブラウザなどの操作方法を練習しておくことが大切です。

 また、事前の事務折衝時には、④通常の団体交渉と同様に出席予定者を確認し、⑤議題の整理や優先順位を定めたり、⑥団体交渉時に使用する資料等は事前に共有したりしておくことも必要です。

 そして、議論の最中、熱くなり、大声が飛び交うことがある団体交渉であることを考えると、オンライン団体交渉の場合、労働者・労働組合側、会社側双方が同時に発言したり、一方当事者の複数人が同時に発言したりすると、マイクの集音能力、スピーカーの分解能力によっては、高価なサラウンド・システムを導入していない限り、音声が重なったり途切れたりすることがあります。

 こうなっては収拾がつかなくなり、団体交渉は失敗に終わります。

 そこで、⑦議題ごとに発言者、発言補助者、質問者、回答者それぞれの発言時間等を定め、発言の機会を持たない者(予定していない者)の発言を極力制限する工夫が必要です。また、例えば、発言の最後に「どうぞ」、「終わります」などの語尾をつけることで、相手方への「発言のバトンタッチ」を明確にすることができます。

注意点

 労働者・労働組合側にオンライン団体交渉のためのwi-fiなどの通信環境や機材がない場合、会社側がそれらを提供することは避けたほうが良いと考えています。

 なぜなら、労働組合法第7条3号は会社からの経費援助を「支配介入」として禁止しており、無用な紛争となるリスクがあるからです。

 たとえ、労働者・労働組合側から費用負担の要望があったとしても厳にお断りしてください。

 もちろん、会社側が、通信環境のある会社内の会議室に会社所有のPC機材を用意して、団体交渉の間のみ、労働者・労働組合側の使用を認める方法をとるならば、「有料の貸し会議室での団体交渉の費用」を会社が負担することが許容されると解されていることと同様に考えることが出来るので、OKでしょう。

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