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東京弁護士会所属弁護士

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テレワーク中の時間管理と残業代はどうすればよいのか

紛争解決
August 28,2020

はじめに

 先般のコロナ禍の影響でテレワークが注目を浴びていますが、今後、「夜中の1時まで仕事をしていたので残業代ください」といった要求が流行ってくるのではないでしょうか。

 テレワーク中はタイムカードなどで勤務時間を把握することもできませんし、「朝9時から深夜1時まで働いていた」と申告があれば、その通りに残業代を払わなければならないのでしょうか。

従業員の勤務時間の管理

 従業員を雇っている者は、法人、個人を問わず、その勤務時間を管理しなければなりません。

 特に、平成31年4月からは、いわゆる「働き方改革」の一つとして各企業や事業者の「勤務時間の把握」が義務化されることになりました。

 なお、「勤務時間(労働時間)」とは、実際に業務を行っている時間だけではなく、
・交代時の引継ぎ
・朝礼や体操
・待機時間
・会社の指示によるセミナー参加、学習時間
なども、これらが指揮命令によって行われている場合には含まれます(会食やその前後も「勤務時間」と認められた裁判例なんかもあるんです)。

 そして、厚生労働省のガイドラインでは、「使用者自らが従業員の勤務時間を現認して記録すること」か「タイムカード、ICカード、PCの使用時間などによって記録すること」が求められています。

テレワーク中の勤務時間の管理と残業代

 コロナ禍の影響をきっかけに、今後、日本でもテレワークが増えていくと思われますが、このようなテレワークの場合、勤務時間の管理はどうすればよいのでしょうか。

 正直なところ、法律も厚生労働省のガイドラインも、テレワーク中の勤務時間の管理については何も書いていません。

 ここで、性善説を前提とするならば、自己申告制によることになるでしょう。ただしそうであっても、上記のガイドラインでは、「従業員に勤務時間の管理の大切さについてしっかりと説明を行うこと」、「申告された勤務時間と実際の勤務時間が合致しているかどうか必要に応じて実態調査を行うこと」といったことが求められています。

 ところで、オフィスに出勤している時と異なり実際的な指揮命令下にないわけですから、真実は9時から20時までの間のうち、14時から18時までは業務外のことをしていたにもかかわらず、「9時から20時までずっと働いていました」と申告されてもわかりませんし、残業代を請求されるかもしれません。たとえPCに向かっていたとしても、Youtubeを見ているのか、Wordで文書を作成しているのかわかりません。

 このようなモラルハザードを招いてしまっては、勤務時間の管理も本末転倒です。

 しかしながら、かといってテレワーク中のPCのカメラを通じて監視するなどすれば、プライバシーの侵害にもなりかねません。

 とはいえ、わざわざ高い費用をかけてテレワーク用の勤怠管理ツールなどを導入するのも得策ではないような気がしますね。

「フレックスタイム制」と「残業の事前許可制」

 そこで、「フレックスタイム制」と「残業の事前許可制」を併用するという方法が考えられます。

 「フレックスタイム制」とは、従業員が、法定労働時間の範囲内で始業時間と終業時間を自分で決定して働く制度です。これを導入するためには就業規則でフレックスタイム制に関する規定を設け、労使協定を締結しなければいけませんが、従業員の自主性を重んじることができるし、まさにテレワークにもうってつけの制度です。

 もっとも、前述のようなモラルハザードを避けるため、翌週の始業時間と終業時間を前もって報告させる(例:月曜9時~18時(休憩1時間)、火曜12時~21時(休憩1時間)といったように)「事前申告型フレックスタイム制」としなければなりません。

 また、オフィスのように上司に見られていないことを言いことに、ダラダラと時間ばかりかけるような勤務を避けるために、残業を事前許可制とすることが肝要です。

 これにより、会社側は勤務時間の管理を自己申告型として適正に行うことが可能となりますし、モラルハザードによる残業代請求も防ぐことができるでしょう。

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