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東京弁護士会所属弁護士

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反社会的勢力への正しい対応

予防法務
August 27,2020

はじめに

 暴力団などの反社会的勢力から不当な要求を受けたり、嫌がらせなどを受けたりした場合、社内で「どうしよう?」と悩む時間があったら、とっとと弁護士や警察に相談し、刑事告訴や民事上の手続、暴力団対策法が規定する中止命令などを活用し、毅然且つ断固とした態度を示すことが大切です。

 言われるがまま“みかじめ料”を支払ったり、不用意につきあったりすると公安委員会によって「反社会的勢力とつきあいのある会社」として公表されるおそれがあります。

暴力団対策法を理解する

 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)」は、暴力団員などによる暴力的な要求行為を規制することで、市民生活の安全と平穏の確保を図ることなどを目的として制定された法律です。

 この法律では、特に、暴力団員などによる不当な行為を「暴力的要求行為」として類型化し、このような行為が行われた場合に、各都道府県の公安委員会や警察署長に対し、「暴力的要求行為を禁止する命令(中止命令)」を発することができる権限を与えています。

 暴力団員などによるこのような暴力的要求行為には、「口止め料」の要求や「寄附金・賛助金・用心棒代」名目のよくわからない金銭の要求、無理やり「下請業者」としての参入することを要求するなど、さまざまなものがあり、これらの行為が「中止命令」の対象となります。

 また、平成20年5月の暴力団対策法の改正により、いわゆる“子分”や“弟分”の暴力団員などが暴力的要求行為を行った場合に、その“親分”や“兄貴分”にあたる暴力団員なども同一の中止命令の対象することができるようになり、さらには、“子分”や“弟分”が行った暴力的要求行為について、その“親分”や“兄貴分”に損害賠償責任を課することが可能となりました。

 あまり詳しくありませんが、彼らの世界には、「目上の人に迷惑をかけることはご法度」という命よりも死守すべき仁義があるようなので、このような関係を利用して暴力団員による暴力的要求行為を抑制することとしたわけです。

各都道府県や市町村における「暴力団排除条例」

 暴力団や暴力団関係者に対する施策は、「法律」による取り締まりだけではなく、地方公共団体が制定する「条例」によっても行われています。

 平成16年、「本人とその同居親族が暴力団対策法に規定する暴力団員でないこと」を公営住宅の入居資格とした広島県の条例を皮切りに、現在では、概ね、以下の内容を含む条例が、地方公共団体ごとに制定されています。


【暴力団の排除に関する条例の内容】
① 暴力団排除活動の推進に関する地方公共団体の基本的な責務や対応方針の策定、
② 地方公共団体と契約を締結する相手方に対する暴力団関係者ではないことの証明の要求、
③ 地方公共団体による暴力団排除活動の広報・啓発活動、
④ 地方公共団体による暴力団の離脱の促進、
⑤ 暴力団排除活動の推進に関する住民の責務、
⑥ 事業者に対する契約締結の相手方が暴力団関係者ではないことの証明の要求、
⑦ 暴力団排除活動の推進などに向けた行為を妨害する行為の禁止、
⑧ 暴力団事務所の開設・運営の禁止、
⑨ 条例に違反した者・事業者に対する勧告・公表措置など、


 このように、条例では、より具体的に、生活に密着した形で暴力団の排除や対抗策を規定しており、法律による取り締まりとあわせて、二重に暴力団排除を命題としているわけです。

暴力団への利益供与も禁止です!

 ところで、平成23年10月1日に施行された東京都暴力団排除条例では、他の地方公共団体の同条例などにならい、暴力団員のほか、暴力団員などと「密接な関係を有する者」も、「暴力団関係者」として、取り締まりの対象としています。

 すなわち、暴力団員そのものではなくても、
① 暴力団や暴力団員が実質的に経営を支配する法人などに所属する者、
② 暴力団や暴力団員を不当に利用していると認められる者、
③ 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者、
④ 暴力団や暴力団員との間で「社会的に非難されるべき関係を有している」と認められる者、
も規制の対象としているわけです。

 さらに、東京都暴力団排除条例は、暴力団を助長したり暴力団に利益を与える行為も「利益供与」と規定し、東京都公安委員会がこのような「利益供与」を行った事業者などに対し、当該行為を止めるよう「勧告」を行ったり、「勧告」を行ったにも関わらず短期間に繰り返し同様の行為を行った事業者などに対し「暴力団に利益供与を行った事実」などを社名とともに「公表」したりことができるようにしました。


【利益供与の例】
① 飲食店などが、暴力団員が経営することを知りながら、当該事業者から、おしぼりや観葉植物などのレンタルサービスを受け、代金を支払う行為、
② 風俗店などが、暴力団員に対し、「みかじめ料」を支払う行為、
③ ゴルフ場経営者が、暴力団が主催していることを知って、ゴルフコンペ等を開催させる行為、
④ ホテルなどの宴会場などが、暴力団組長の襲名披露パーティーに使われることを知って、ホテルの宴会場などを貸し出す行為、
⑤ 不動産業者が、暴力団事務所として使われることを知った上で、不動産を売却、賃貸する行為、
⑥ スポーツや演劇などの興行を行う事業者が、相手方が暴力団組織を誇示することを目的としていることを知った上で、その暴力団員らに対して特別に観覧席を用意する行為、
⑦ 警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その事務所の警備サービスを提供する行為、


 すなわち、ビジネスの相手方が暴力団員などであると知っていながら、あえて、ビジネスを行った場合(そして、このような取引は、大抵の場合、ビジネスにとって必要ではないことがほとんどです)、暴力団員などに対する「利益供与」と判断されてしまう可能性があるということです。

 このように、暴力団員などと必要以上に“お付き合い”をする企業なども規制対象とすることで、暴力団員などの徹底排除と、安全・安心・平穏な生活を保護しています。

 以上のとおり、暴力団員などとのお付き合いはご法度であり、これを無視して“みかじめ料”を支払うといったように不用意な関与をすると、自らも条例の規制対象となるおそれがあります。

 暴力団対策法や暴力団排除条例を正しく理解し、暴力団員などに対しては、毅然且つ断固とした態度を示すことが大切です。

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